カタカナが苦手な中学生
子どもに文字を教える時に、ひらがなが覚えられたら次はカタカナ、とお考えになるご家庭は多いのではないでしょうか。実はこのカタカナ、注意しないと、とんだ落とし穴があります!!
中学校で教員として働いていて気付いたのですが、低学力の生徒の特長として、カタカナを書くのが苦手な傾向があります。
私の教科は英語でしたので、生徒の中には、発音を教科書に書き込もうとする子もいました。英語を日本語に変えるわけですから、生徒は当然カタカナで書こうとします。
その時、生徒のうちの何人かは、書く手が急に止まってしまうのです。カタカナで書こうとすると、どういう字だったか、思い出せないのです! 特に「シャ」「ジョ」などの拗音がすぐに書けません。カタカナの書き方を思い出そうとしている間に、授業は先に進んで、おいていかれてしまいます。些細な苦手なことが、学習面に悪影響を与えてしまう例です。
中学生にもなってカタカナが書けないなんて、信じられないかもしれないですが、どの学年でもどのクラスでも、しょっちゅうそういう子がいました。珍しいことではありませんでした。
中学生以降にカタカナの練習をする機会はありませんから、そういう子は、恐らくそのまま大人になっていくのでしょう。ということは、カタカナを書くのが苦手な大人もたくさんいるのかもしれません。
なぜカタカナが苦手な中学生(そしておそらく大人)がいるのでしょうか?
それはカタカナは、ひらがなに比べて、読んだり書いたりする機会が圧倒的に少ないからだと思います。
カタカナは学校をあてにできない!
カタカナの学習は、たいてい小学校1年の秋くらいから始まるようです。1年の終わりまでに一通りは書けるように指導がなされるようです。
そうやって国語という教科の中でカタカナの指導はされても、それ以外では読み書きする場面が少ないのが、カタカナの厄介なところです。
ひらがななら、国語はもちろん、他教科の教科書にも登場します。小学生は帰りの学活で「連絡帳」なるものに翌日の持ち物を書いたりしますが、それもひらがなと漢字が中心です。読書が好きな子も多いでしょうが、カタカナばかりの本はあまりありません。
というわけで、学校に任せただけではカタカナの練習は不十分になるかもしれない、ということを覚えておいた方がよさそうです!
小学校をあてにしないで効果的にカタカナを身に付けさせるには、ひらがなと同様、やはり小学校入学前に一通り読み書きができるようにしておくと安心です。あるいは小学校に入学してからでも、夏休みなど時間の取れる時に、学校よりちょっと先に練習するだけでも、お子さんが自信を持って授業に臨めるのではないでしょうか。
それではまず、カタカナはどうやって覚えるのが効果的でしょうか。
カタカナの教え方
ステップ1: まずカタカナを読めるようにする
ステップ2: 各カタカナを正しく書けるようにする
ステップ3: どういう時にカタカナを使うのか教える
ステップ1:まずカタカナを読めるようにする
ひらがなが一通り読めるようになっていれば、一般的に、カタカナを覚えるのはさほど難しくないようです。文字を覚える回路のようなものが、子どもの脳に出来上がっているのかもしれませんね。カタカナを読めるようにする、おすすめの方法を3つ紹介します。
カタカナポスターをひらがなポスターの横に貼る
我が家の例をお話しましょう。
息子は七田(しちだ)式「ひらがなカード」で、2歳の終わりにひらがな全部を読めるようになっていました。
カタカナはどうやって教えたらいいかな?? ・・・と思いつつも、当時お腹に二人目の子供がいて体調が万全でなかった私は、いろいろと検討するエネルギーを持ち合わせていませんでした。とりあえず、壁に貼ってあったひらがなポスターの真横に、同じシリーズのカタカナポスターを貼りました。
3歳になったばかりの息子には、「『カタカナ』の文字は、それぞれ『ひらがな』と形は違うけれど、読み方は同じなんだよ」とだけ、話しておきました。
カタカナポスターを貼って10日程が経ちました。当時体調が悪かった私は、その間何も教えませんでした。
でもびっくり!!
我が子がカタカナをすらすら読むではありませんか!
すでに読める隣のひらがなを見て答えているわけではありません。私がバラバラに指さして「この字は?」と尋ねても、正しく読めているのです。なんと、息子は自分で勝手に学習してしまったのです!
七田(しちだ)式「ひらがなカード」の時に感じたことですが、子供の脳は、2つのものを見比べるのが大好きなようです。2つのものを見て、その共通していることや違うことを見つけるのが得意なのでしょうね。
2枚の50音表を見比べて、わずか10日ほどの間に、一人で勝手にカタカナを覚えてしまった我が子の集中力に驚きました。
1枚にひらがなとカタカナの両方が書かれているポスターも市販されています。ひらがなの各文字に小さくカタカナが添えてあるようなタイプです。それでも大丈夫かもしれませんが、できたら別々のポスター(なるべく同じシリーズで、同じ場所に同じ大きさで文字が書いてあるもの)を貼ってあげた方が、お子さんが見やすいと思います。すでに覚えているひらがなを手がかりにして、それと少し形が違うカタカナを見比べることで、脳に追加情報をインプットできるようにしてあげるのです。
手作り「カタカナ&ひらがなカード」で教える!
上記で述べた通り、カタカナの覚えさせ方のポイントは、すでに知っているひらがなと、まだ知らないカタカナを子どもに見比べさせて、違いや似ているところに気付かせるということです。
そのためには、カタカナとひらがなの文字だけ書いてあるカードが効果的です。
簡単に自分で作れます!まず色画用紙を買って下さい。ひらがな用1色と、カタカナ用1色の別の色にします。
それぞれの色を46文字分、つまり46枚ずつ切ります。大きさはお好みですが、かるた程度の大きさが使いやすいと思います。また、真四角よりも長方形の方が、お子さんにとって文字の向きが分かりやすいのでよいと思います。
切り取ったら、太く、はっきり、1枚1文字ずつ、ひらがな、カタカナを書いて、ひらがなカード46枚、カタカナカード46枚を作って下さい。
カードが用意できたら、カタカナの読みを教えます。
46文字全部まとめてでは負担が重いので、5枚ずつとか、10枚ずつとかに分けて、少しずつ覚えていくのがおすすめです。
まず、ひらがなカード5枚~10枚を並べます。
(ここでは「あ」「い」「う」「え」「お」5枚を並べたとしましょう。)
そしてその横に、「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」のカタカナカードをごちゃまぜにして置いておきます。
お子さんに「『う』と似ているのはない?」と言って『ウ』を見つけさせるのもよいし、カタカナポスターを参考にさせながら、「『あ』のカタカナはどれ?」と尋ねて、『ア』を選ばせるのもよいでしょう。
そうやって、ひらがな&カタカナのペアを作らせます。
そうして遊んでいく間に、子どもは、カタカナには「う」「ウ」、「か」「カ」、「き」「キ」、「こ」「コ」など似ているものが多いとか、ちょっとここの部分が違うとか、特徴を認識していくようになります。
ひらがな&カタカナ手作りカードで、神経衰弱をして遊ぶこともできます。そのために画用紙を最初から違う色にしたのです。違う色2枚をひっくり返せば神経衰弱ゲームができますね。
46枚全部だと枚数が多いので、最初は減らしてからやるとよいと思います。親御さんは上手に負けて、お子さんにカードをとらせてあげてくださいね。
この他、50音順に並ばせたり、カードをシャッフルして山にして、上にあるカードから順に、その文字で始まる言葉を親子で言い合うというゲームもできます。
遊びの中で覚えてもらうのが効果的です!!
くもんのカード(ことば)カタカナカードを使う
くもんの「カタカナカード」は、カタカナの文字をフラッシュカードとして子どもに見せるのに適しています。また両面印刷になっていて、各カタカナ文字の裏面には、その文字を使ったカタカナ言葉とイラストがあります。カタカナはひらがなと違い、どういう時に使われるか(外来語はカタカナになるなど)を知ることが大切なので、その点でくもんの「カタカナカード」は効果的です。
さらに、くもんの「カタカナカード」には、「ことばのえほん」がついています。どういう言葉にカタカナが使われるかを知るのに、分かりやすい一冊になっています。
ステップ2: 各カタカナを正しく書けるようにする
カタカナが読めるようになったら、次は書く練習です。
ひらがなと同様、書き順と鉛筆の持ち方に気を付けて練習させてください。
「ツ」と「シ」を書き分けられない子が多いというのは誰でも知っていることですが、注意が必要なカタカナは他にもあります。
学校で中学生のテスト採点をしていて困った経験があります。記号(カタカナ)で答える問題で、「ア」と「イ」の区別がつかない生徒が結構いたのです!「ア」の一角目が斜めだったり、しっかり曲がっていなかったり、そして「イ」の一角目が水平に近いと、両者の区別がつきにくくなります。そのようなことにならないように、文字の覚え初めから丁寧に練習することが大切です!
自由帳などに練習させてもよいですが、例えば、次のようなプリント類を利用するのもよいでしょう。
☆なぞらずにうまくなる子どものカタカナ練習帳
文字通り「なぞらず」カタカナを練習する仕組みです。まずお手本を「見て」書きます。次に「小さな丘を登るよ」などと「イメージして」書きます。最後には字形の位置関係を「論理的に考えながら」書きます。子どもが楽しく取り組める工夫満載の練習帳です。
☆七田式(しちだ)カタカナれんしゅうちょう
カタカナ46文字をひたすらなぞる練習帳です。同じものが30ページあるので、カタカナ全部を30回練習できます。地味でシンプルですが、1日1枚練習すると1ヵ月で終わります。全部やれば相当力がつくのではないでしょうか。
どの教材を使おうとも、最も重要なのは、お子さんを褒めて、褒めて、褒めまくるということです!
またお子さんの横について、カタカナ練習のような「お勉強タイム」を設けることは、学習習慣を身につけることにもつながります。
しっかり褒めて、お子さんの努力を認めることで、お子さんに「勉強をするのは良いことだ」という意識を植えつけてしまいましょう!
ステップ3: どういう時にカタカナを使うのか教える
カタカナの学習では、実はこれが一番大切で、かつ難しいかもしれません。どういう言葉だとカタカナで書く必要があるかを身に付けるには、子どもの語彙力も関係してくるからです。
上記のくもん「カタカナカード」はカタカナで書く言葉も紹介されているので、おすすめです。
また、絵本を通しても、カタカナ言葉を教えてあげることができます。
例えば:
☆「ステキナカタカナ」(五味太郎)
独特な魅力ある絵が楽しい絵本です。
「ア」なら「アップリケ」「アンテナ」「アウト」「アイスクリーム」など、そして「アルゼンチン」「アメリカ」などの国名も出てきます。
カタカナに添えて、英語とローマ字も併記されているので、「外国からの言葉はカタカナで書く」と自然に理解できるようになっています。
☆「かたかな絵本アイウエオ」(五味太郎)
「ステキナカタカナ」よりも語彙数は少ないです。
「ア」なら「アイスクリーム」と「アドバルーン」が載っています。
各ページにカタカナとひらがなが並べられて書かれているので、カタカナの読みを覚えるための本としても使うことができます。
文字が正しくしっかり書けることは、学習の基本中の基本です。大きくなってから困らないためにも、最初の取り組み方が肝心です。ひらがな、カタカナともに、しっかりサポートしてあげましょう!