書けなくても読める漢字を増やすことの意味
小中学生が英語を習い始める時、例えば、red, water, happy, you など、生活の中で聞いたことのある言葉は、スペルは書けないとしても、意味はすぐに分かったり、読むことができるようになります。スペルも書けて、単語をしっかり身に付けるようになる前段階として、その単語の意味が分かり、読むことができるということはとても大切です。英単語は読めなければ書けるようになりません。意味が分からなければ覚えようがありません。
漢字にも同じことが言えると思います。
小学校に入ると、通常、何も知らない段階から、読み方と書き方を同時進行で学習します。ところがそれがうまくいかず、漢字学習で低学年のうちから早くも勉強につまづいてしまう小学生はとても多いのです。
しかし、もし学習する漢字をたまたま最初から知っていたらどうでしょう。例えば自分や家族の名前の漢字で、見覚えがあるものだとしたら・・・。きっと他の漢字に比べて、ずっと早く書けるようになるでしょうし、その漢字を使った熟語も覚えやすいのではないでしょうか。
私は我が子が小学生だった時に、漢字の学習は陰山メソッドを使いました。陰山メソッドを知らなかったら、どう進めてよいか全く分からず途方にくれていたと思います。
陰山メソッドは小学校の6年間、学校での漢字学習を補うために家庭で必死に取り組んだ学習法です。しかし我が家は小学校入学前に、漢字学習の前段階として、もう1つ別の取り組みをしていました。ここではそれについてご紹介します。
幼い時から漢字に親しむ
我が子は幼い頃からひらがなやカタカナなど、文字に大変興味のある子でした。理系に進んだ今から判断するに、文字への興味というより、数学の図形にも通じるところのある、字の「カタチ」への興味だったのでしょうね。そういう字の「カタチ」への興味は、幼稚園に進む頃、自然と「漢字」へと移行していきました。
緊急連絡網の友達の名前
例えば家の冷蔵庫には、幼稚園の緊急連絡網の表が貼ってありました。(今は個人情報保護の配慮やメール・ラインの普及で、緊急連絡網を配布しない幼稚園が多いかもしれませんが、当時は普通のことでした。)我が子はこの連絡網が大好きでした。なぜって、お友達の名前が親向けにすべて漢字で書いてあるからです。
普段「りゅうすけ」とか「ゆうな」とか、音でしか知らないお友達の名前は、本当はこういう漢字なんだ!!・・・と分かるのは、我が子にとってわくわくする発見だったらしいのです。私よりも詳しく、お友達の名前の漢字を覚えてしまいました。
駅名
それから駅名。電車好きだった我が子は、路線図も大好き。普段家族で出かける時に利用する電車の駅名や、プラレール遊びをする時に出てくる地方の駅名など、私が特に促したわけではないですが、自然に漢字で覚えていきました。
選挙のポスター
それと、選挙のポスターも好きでしたね。選挙が近くなると立候補者のポスターがその氏名と共に掲示されますね。それを見ては、私に読み方を尋ねたりしていました。
面白かったのは「○○了一」という立候補者がいらした時のこと。我が子は、「お母さん、『アー』さんだって!」とウケていました(笑)もちろん正しい読み方をすぐに教えてあげましたよ!
子どもは好奇心旺盛!! 興味があることは、どんどん覚えていくのです!!
だから大人は、「子供だから無理だろう」と勝手に思い込んで、学習の機会をせばめてしまってはいけません。子供が興味を持っているなら、それが、その子にとって吸収するのに一番よいタイミングなのです。
手作り「漢字」混じり絵本
とういうわけで、こんなに漢字が好きなのなら・・・と愛する我が子のために、ちょっと面倒だったけれど、私がやってみたことがあります。我が子が4歳頃のことだったと思います。
それは、子供が好きな絵本を選んで、内側のお話(ひらがな)の文字の上に白い紙を貼り、私が漢字混じりの文に書き換えたことです。
そのうちの1冊をお見せします。この本は、電車好きの我が子が特に大好きだった、「しゅっぱつしんこう!」という絵本です。
まず文字の上にラベル紙を貼る
絵本の文字(ひらがな)部分に裏が粘着性のラベル紙を貼りました。1枚だと下の文字が透けて見えてしまうので、2重にして貼りました。
ラベル紙の上に漢字混じりで文を書き直す
次に、ラベル紙の上に、元はひらがなであった文章を漢字混じりで書き直しました。「この漢字は難しくて子供は読めるはずがない」などとは考えないで、普通なら漢字で書くであろう部分をすべて漢字にしました。
子どもの反応は?
もう話を覚えるほど何度も読んだ絵本なので、我が子は漢字になってもスムーズに読んでくれました。漢字混じりということで、誇らしい気持ちにもなれたと思います。大好きなお母さんが作ってくれた絵本ですから、とても喜んでくれました。
子供が大きくなり、たいていの絵本は姪っ子や甥っ子に譲ってしまいましたが、この漢字に書き換えた半手作り絵本だけは、思い出がつまっていて手放せません。
生活の中で漢字に触れさせよう
生活の中には、当然のことながら漢字があふれています。
我が子にとっては、幼稚園の緊急連絡網だったり、駅名だったり、選挙ポスターだったりしたわけですが、この他にも、町の看板だったり、買い物に行った先の店の中の商品名だったり、新聞の折り込みチラシだったり、テレビ番組の名前だったり・・・実際の生活の中では、ひらがなだけのものを見つける方が大変だと思います。
生活に出てくる漢字を無理に教えろとは言いませんが、日々の子供とのコミュニケーションの中で、子供の興味に合わせて、自然と漢字に触れさせてあげることは大切だと思います。そうすることで子供は、小学校で本格的に漢字学習を始める際に、「書けなくても見たことがある漢字」「書けなくても読める漢字」を増やすことができます。それが、漢字学習における「書く」学びへとスムーズに移っていくきっかけになるわけです。
小学校では6年間で1,000字あまりもの漢字を学習します。入学前の親のちょっとした心がけで、漢字学習の下準備ができるとよいですね!国語はすべての学習の基本です!頑張りましょう!